人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ひびのことのは。

misady.exblog.jp
Top
『ガウディの伝言』
2006年 09月 27日 |
未だ全体の三分の一程しか読んではいないのだが、この本については兎に角今の今、一言だけでも感じたことを書き留めておきたくて書いている。
それにしても・・・隔日徹夜勤務中につき、二日に一度の往復通勤電車内でしか読めないのが返す返すも口惜しい。小説ではないのに、続きが気になって仕方ない本に出会ったのは実に久しぶりなのである。


この本、著者はかの有名なサグラダ・ファミリア(聖家族教会@バルセロナ)の専任彫刻家、外尾悦郎氏。確か一時コーヒーのCMに出ていらしたように記憶しているので、ガウディに興味が無くともご存知の方は多いのではないかと思う。
全体を読み通していないのでこれ以上詳しくは言えないが、この本には彼が渡西以来ほぼ毎日休み無く、サグラダ・ファミリアを始めとする作品群と面々対して徐々に読み解いていった、史上稀に見る天才建築家ガウディからのメッセージが惜しげもなく開示されている。
その語り口は非常に柔らかく、内容は実に鮮烈。ページを繰る毎に、思わず感動のため息が洩れるほど。
そして何故、以前自分自身が実際にサグラダ・ファミリアを前にした瞬間、まるで雷に打たれたようにその場から一歩も動けなくなったのかが、読み進むうちにハッキリと分かってきたのだ。

学生であったその当時、右も左も分からぬ子どもでしかなかった自分にとって、何故この聖堂が、あるいはガウディの建築物だけがそこまで特別に思えたのか。
実に不思議でならなかったその謎が、この本のページを繰る毎にするすると解けていく様は、恰も深い闇の底に一条の光の射す如く・・・長年空虚であった身の内の奥処に新鮮な空気が送り込まれ、目覚めの時を待ち続けていた何ものかがそこで初めて息を吹き返したかのような、少々大袈裟に言ってしまえば覚醒の驚きにも値する。

例えば。彼が弟子たちに残した重要な言葉のひとつに、こんなものがあると言う。
『人間は何も創造しない。ただ、発見するだけである。新しい作品のために自然の秩序を求める建築家は、神の創造に寄与する。故に独創とは、創造の起源に還ることである』
さらに、この言葉でふと思い出したのが、思想家G・ショーレムのこの言葉。
『創造とは、絶対者から何もかも離れたあと絶対者に戻る過程である』
神や絶対者という言葉に馴染みのない我々には、純粋に自然と人間との関係と言った方が分かり易いかも知れないが(と、この著者も言っている)・・・そう、今後どれ程に目覚ましく科学が発展を遂げようと、どれ程艶やかに文化の華が咲き誇ろうと。人間がイチから創り出せるモノなど、ひとつとして無いのだ。
それでいて、我々の最も身近にあってしかも最も近づき得ぬ存在の根源に息づく完全性という名の美は、時や場に応じて様々にその姿を変えながらも、目に見え肌に触れられるあらゆるものの内に密やかに隠されており・・・一瞬でも垣間見た者には、その後の人生を圧倒的に左右してしまう程に強烈な、神秘の薫りを残していく。
実の処、何処から来て何処へ還るのか、何も分からぬままにただ現世の波間を漂うだけの根無し草(デラシネ)だった己自身にとっても、これらの『言葉』との出逢いは実に鮮烈な驚きであり、霹靂であり、人生を左右する転換点でもあったのだから。


・・・さて。
一言だけでもと言いながら、まるで熱に浮かされたように長々と書いてきてしまったが・・・最後にまた、長い一言を(笑。

偉大なる書物も、偉大なる建築物も・・・無論、偉大なる人間も。読み解くほどにその深みは計り知れず、見るものを惹きつけてやまない。真の魅力とは、実はそういうことなのだな、とも思う。
また、この本のページを捲る度、ガウディに出逢えた著者も、その著者を通してガウディとあらためて出逢うことの出来た自分も。
本当に幸せ者だと、心の底から思うのである。


 ~ サグラダ・ファミリアについて・・・詳しくはこちらをご覧ください。 ~
by misa_diary | 2006-09-27 00:00 | read |
XML | ATOM

会社概要
プライバシーポリシー
利用規約
個人情報保護
情報取得について
免責事項
ヘルプ
Book Skin by Sun&Moon